料理になる前の、見えない仕事 ——自家製「うお塩糀」のこと
更新日:2 日前

まぐろと鯛の切り身に、白く濁った糀を一匙。
写真では、ただの調味料に見えると思います。
けれどこの一匙が、当店の刺身の輪郭を決めています。
海の旨みを、山の旨みが支える
「うお塩糀(うおしおこうじ)」は、当店で仕込んでいる自家製の糀調味料です。材料は四つ。米糀、うお塩、干し椎茸、自然塩。
魚から取った塩と、山の椎茸。海と山、二つの旨みを米糀がひとつに束ねます。どちらか一方では、こうはなりません。海の旨みだけでは輪郭が立ちすぎ、山の旨みだけでは芯が残らない。糀が間に入って、はじめて両方が同じ方向を向きます。
糀は、待つ道具です
糀の仕事は、足すことではありません。すでにそこにある旨みを、引き出して、つなぐことです。
仕込んだあと、私たちにできることはほとんどありません。瓶の中で、糀がゆっくりと分解を進める。香りが変わり、色が変わり、舌ざわりが変わる。その変化を見届けて、頃合いで止める。
紀州・湯浅は、醤油発祥の地とされる土地です。この地で四十年近く料理をしてきて、たどり着いたのは「発酵は技術ではなく、時間の使い方だ」ということでした。
まぐろと鯛を、この糀に預ける
使い方はごく簡単です。まぐろと鯛の切り身に、うお塩糀を薄く塗る。それだけ。
醤油をつけずに召し上がっていただきます。魚そのものの甘みが前に出て、後口に椎茸の余韻が残る。醤油の強さで覆わないぶん、その日の魚の状態がそのまま出ます。
だから、魚の目利きから逃げられない一品でもあります。
見えないところに、店の性格が出る
お客様がご覧になるのは、皿の上だけです。仕込みの瓶も、待っていた日数も、お見せすることはありません。
それでも、そこに一番時間をかけています。料理になる前の仕事が、料理の味を決めているからです。
糀dining39シトラス
和歌山県有田郡有田川町小島215-5/完全予約制
うお塩糀を使った一品は、会席のお造りでお出ししています。ご予約・お問い合わせはウェブサイトから承ります。





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