一尾が、塩になる。──うお塩ができるまで
- Hirofumi Sonoda

- 5 日前
- 読了時間: 3分
更新日:4 日前
海は、毎日ちがう顔をしています。
何が獲れるかを決めるのは、こちらではありません。
だから私たちは、決めてもらう側でいることにしました。
栖原(すはら)へ、選ばずに会いに行く
魚は、届くのではありません。
朝早く、湯浅の栖原港まで、こちらから会いに行きます。
知る人の少ない、小さな港です。
漁師さんの手から、直接受け取ります。
「今日は、鱧なかったん?」「暑かったやろ」――そんな言葉を交わしながら。
魚種も、大きさも、こちらから指定しません。その日の網に入ったものが、その日の品書きになります。
指定をしないということは、弾かれる魚が出ないということです。
目方が足りない、形が悪い、名の通りが悪い——市場ではそうした理由で行き場を失う魚がいます。有田川町のこの板場には、その魚がいません。
週2回、栖原港から届きます。
大きな魚は、骨まで
魚体の大きなものは、身を造りや焼き物に使い、頭も骨も皮も、スープに沈めます。
和食の出汁とはまた別の、魚そのものの厚みを持った一番です。
小さな魚は、塩になる
問題は、小さな魚のほうです。
一尾から取れる身はわずかで、手間だけがかかる。多くの店で、真っ先に行き場を失うのがこの魚たちです。
当店では、この小魚を「うお塩」に変えています。工程はこうです。
1. 小魚に、多めの塩をあてる
2. 一日、寝かせる
3. しっかりと焼く
4. 天日で、完全に乾かす
5. 頭・骨・内臓を外し、身だけにする
6. 粗塩と合わせ、軽く炒る
7. 挽いて、粉にする
3日間、天日で乾かします。
道具らしい道具は、天日しかありません。
火と、塩と、日と、時間。冷蔵庫のなかった時代からこの国が続けてきた手順を、そのまま踏んでいるだけです。
小魚が、大きな魚を養う
海のなかでは、小さな魚が大きな魚を養っています。
皿の上でも、その順序を変えないことにしました。
大きな身に、小魚の塩が寄りそう。
うお塩は、この店にしかない海の塩です

当店では、このうお塩を造りや自家製塩麹に使っています。
塩は、糀になる
さらにこの「うお塩」を床にして、独自の塩糀を育てています。
醤油糀、ポン酢糀、そしてうお塩糀。当店の糀は、この三種です。
一尾が、皿になり、汁になり、塩になり、糀になる。
魚を使い切るとは、そういうことだと考えています。
千年前から、この土地がしていたこと
隣町の湯浅は、日本の醤油が生まれた土地です。
発酵は、和歌山のこの一帯にとって、新しい手法ではありません。
派手なことは、何もしていません。
海に従い、糀に任せる。千年前からこの土地が続けてきたことを、一枚の皿の上で続けているだけです。
この店の考えかたは「発酵と大地」に書いています。
糀dining39シトラス
和歌山県有田川町小島215-5/0737-52-3939(水曜定休)




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