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一尾が、塩になる。──うお塩ができるまで

更新日:4 日前

海は、毎日ちがう顔をしています。

何が獲れるかを決めるのは、こちらではありません。

だから私たちは、決めてもらう側でいることにしました。


栖原(すはら)へ、選ばずに会いに行く


魚は、届くのではありません。

朝早く、湯浅の栖原港まで、こちらから会いに行きます。

知る人の少ない、小さな港です。


漁師さんの手から、直接受け取ります。

「今日は、鱧なかったん?」「暑かったやろ」――そんな言葉を交わしながら。

魚種も、大きさも、こちらから指定しません。その日の網に入ったものが、その日の品書きになります。


指定をしないということは、弾かれる魚が出ないということです。

目方が足りない、形が悪い、名の通りが悪い——市場ではそうした理由で行き場を失う魚がいます。有田川町のこの板場には、その魚がいません。


週2回、栖原港から届きます。


大きな魚は、骨まで


魚体の大きなものは、身を造りや焼き物に使い、頭も骨も皮も、スープに沈めます。

和食の出汁とはまた別の、魚そのものの厚みを持った一番です。


小さな魚は、塩になる


問題は、小さな魚のほうです。

一尾から取れる身はわずかで、手間だけがかかる。多くの店で、真っ先に行き場を失うのがこの魚たちです。


当店では、この小魚を「うお塩」に変えています。工程はこうです。


1. 小魚に、多めの塩をあてる

2. 一日、寝かせる

3. しっかりと焼く

4. 天日で、完全に乾かす

5. 頭・骨・内臓を外し、身だけにする

6. 粗塩と合わせ、軽く炒る

7. 挽いて、粉にする


3日間、天日で乾かします。


道具らしい道具は、天日しかありません。

火と、塩と、日と、時間。冷蔵庫のなかった時代からこの国が続けてきた手順を、そのまま踏んでいるだけです。


小魚が、大きな魚を養う


海のなかでは、小さな魚が大きな魚を養っています。

皿の上でも、その順序を変えないことにしました。


大きな身に、小魚の塩が寄りそう。

うお塩は、この店にしかない海の塩です

当店では、このうお塩を造りや自家製塩麹に使っています。
当店では、このうお塩を造りや自家製塩麹に使っています。

当店では、このうお塩を造りや自家製塩麹に使っています。


塩は、糀になる


さらにこの「うお塩」を床にして、独自の塩糀を育てています。

醤油糀、ポン酢糀、そしてうお塩糀。当店の糀は、この三種です。


一尾が、皿になり、汁になり、塩になり、糀になる。

魚を使い切るとは、そういうことだと考えています。


千年前から、この土地がしていたこと


隣町の湯浅は、日本の醤油が生まれた土地です。

発酵は、和歌山のこの一帯にとって、新しい手法ではありません。


派手なことは、何もしていません。

海に従い、糀に任せる。千年前からこの土地が続けてきたことを、一枚の皿の上で続けているだけです。


この店の考えかたは「発酵と大地」に書いています。



糀dining39シトラス

和歌山県有田川町小島215-5/0737-52-3939(水曜定休)

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