8月6日 船に、海が残っている
朝、栖原の岸壁に着くと、船はもう舫われています。
港に着くころには、もう終わっている
沖にいた時間のことを、私は知りません。
暗いうちに出て、明るくなるころに戻る。私が着くときには舫が掛かって、舷はもう静かです。
一日を終えた船と、これからの私が、岸壁で一度だけ会います。箱を受け取るのは、その一点です。
舫われていても、腹は静かでない

その船の腹を、しばらく見ていました。
白く塗られたところに水の照り返しが網のように掛かって、絶え間なく形を変えています。黄色の側にも掛かって、そこだけ塗りが揺れて見えます。
船は動いていません。舫ってあるのだから、動きようがない。それでも腹の上では、光がずっと動いています。
海が、まだ船に残っているように見えました。
箱の中身は、この船が持ち帰った
恵比須丸といいます。
この船が持ち帰らなければ、発泡箱は空です。鱧も、鯵も、鯛も、みんな沖の、暗いうちの仕事です。
私が触るのは、そのあとです。魚のことを話しながら箱を受け取って、車に積んで、店に戻ります。
蓋を開けても、何も見えない
戻れば、仕込みが待っています。
糀は、蓋を開けても何も見えません。音もしません。それでも、中では進んでいます。
港を出るとき、もう一度、船を見ました。
舫われたまま、腹の光だけが動いていました。
糀dining39シトラス
和歌山県有田川町小島215-5
0737-52-3939
昼11:30-14:00/夜18:00-22:00(水曜定休)





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